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「ただ、一つ奇妙な点がありましてね」
七瀬は、ふと言葉を漏らした。
「実は、首元に小さな穴があったんですよ」
穴か。そこから血を抜き取ったとでも?
「その穴はどのような?」
「写真が手元にないのですが、確か直径2ミリ程度のものです」
「なるほど。注射針ということも考慮できますね」
二人は、しばらく「あぁだこうだ」と言い合ったが、事件現場にはめぼしい証拠もなく、僕たちは一旦立ち去ることにした。
七瀬は「そろそろ署に戻らないと」と言い、さっさっと走り去る。さて、僕はどうするか。現在の被害者は二名。既に両方の現場は見た。
「あっ、あぁ……」
三人目の被害者が出れば、更に何かヒントを得ることができる。一瞬でも、そう考えてしまった自分が情けない。
「最低だ」
まだ調べるべきことがあるはずだ。
そう言えば、一人目の被害者の身元が確認できていない、と七瀬が先日話していた。この線から探る必要があるのでは、ないだろうか。
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