男女の契り≠ボク

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〈2〉   「どうして君は私の邪魔をするんだ!」    早朝から慌ただしく、事務所内部に響き渡るほどの、しかし低い声が僕の鼓膜を揺さぶった。   「如月さん、あなたが次から次へと無意味な創作をするからでしょう。そんなことをしている暇があったら、仕事してください。書類に封筒、手紙の山をどうにか処理しないと……って、聞いてますか!?」    如月さん。如月一茶(きさらぎいっさ)は、トランプで自称「幻想的な城」を製作することに夢中だった。僕がその邪魔をしたと言うのだから、難儀なことだ。   「ソラ君、君は昔から少々頭が堅いようだ。私のように“クリエイティブで柔軟な生き方”をしたまえ」    ソラ君。神無月空(かんなづきそら)とは僕の名だが、そんなことよりも眼前の事態収拾が先決である。    僕にとって、災難の元凶とも言える彼の一挙一動を、今日こそ改善させる必要があるのだ。   「その“クリエイティブで柔軟な生き方”のせいで、僕に多大な被害及び甚大な損害を与えるのは、やめてほしい。今月の依頼を“全部”断った理由を答えてもらいましょうか。如月さん」    そもそも、クリエイティブで柔軟な生き方とは、創作意欲がどうとか言い訳してきた彼だが、結局のところ所謂自己中心的な生き方な訳で……。  
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