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そんな自己中心的な“この男”は今月の依頼延べ十二件を、僕の承諾もなしに全て悉く断ったのだ!
しかし、常々彼は何やら見苦しい言い訳を思い付く。その言い逃れの才能を仕事上役立てたことは、当然のことながら皆無である。
「ソラ君、私はね、ありふれた日常に飽き飽きしているのだよ。人間ならまだしも、猫を探してどうなる? 君も君だ! もっと有名人らしく振る舞いたまえ」
勝手に有名人扱いされているが、そんな大それた者じゃない。世の中、若い探偵がちょっと事件を解決しただけで騒ぎたがるのだ。
おかげで、僕はマスコミに“襲われる”は、変な追跡者が現れるはで迷惑極まりない。
「猫も大切です。あなたがそんな自己中心的で社交性のない性格もとい人格だから、僕まで変な異名で呼ばれるんです。異名どころか、“敵対”してますよ」
アドバーサリー。僕たち二人の愛称みたいな異名だ。アドバーサリーの響きは良いが、意味においては“敵対”とか“競争者”とか、内部紛争ですかと。
「君は私の性格どころか人格まで否定するのか。あぁ、なんてことだ。世の中の差別撤廃に向けて、私は日々思考を巡らせていると言うのに」
「トランプで城を作ることがですか?」
「…………」
どうやら反論の余地はないらしい。沈黙がそれを表していた。
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