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「全く、あなたがそんな人だから……あっ! 断る時にちゃんと謝罪もしましたか?」
彼のトランプタワーが見事に崩壊した。明らかに動揺が見て取れる。
「うむ、ちゃんと言ったさ。我々は下らぬ依頼は受けません、別所にて相談ください……とな」
あぁ、謝罪になってないどころか、他事務所をお勧めするなんて。この人は絶対的なバカか。
「今から十二件全て、謝罪に行ってこい! サボったら公衆の面前で、あなたの秘話を暴露します」
如月はビクっと体を震わせ、一切の文句も言わずに事務所を飛び出して行った。利口な奴だ。
そもそも、彼と知り合った八年前――僕が十七の時――から、彼は他人とは違った感性を持っていた。良い意味で言えば「奇才」に近い存在。悪い意味で言えば「究極の馬鹿」。
しかし、その魅力に惹かれたからこそ、今も行動を共にしているのだろう。
そう言えば、彼の年齢は不詳だ。八年前から容姿は殆ど変わらず、実年齢は不明。
初めて出会った時から、渋みの効いた所謂“オジサマ”だった。あれから年月が経って、今は結構な歳のはずだ。
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