男女の契り≠ボク

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 本人に直接聞いてみても良いのだが、イメージが完全崩壊するような年齢だと、今後の会話に支障を来しそうなので遠慮してきた。案外、若いのかもしれない。逆に50歳ぐらいだと笑ってしまう。   「あの、すいません」    考えに耽っていると、事務所の入口から男性の声がした。なんだろう……依頼だろうか。   「はい。ようこそ、探偵事務所“月屋”へ。依頼ですか?」    男性は何か戸惑いながら、なかなか目線を合わそうとしない。季節感溢れる紺色のコートを羽織り、黒のジーパンといった姿だ。外の冷気と事務所内の暖気が混じり、彼の眼鏡を曇らせている。   「えっと、まず始めに……私が訪問してきたことを、口外しないで欲しいんです」    何か訳ありか。依頼主の中には、こういった事情を隠したがる人達もいる。慣れっこだった僕から見れば、特に違和感はない。   「勿論、口外しませんよ。警察にも、マスコミにも……依頼主様の情報を御守りします」   「えっと、更に言いにくいんですが、私は警察関係の者なんです」    訳あり警察関係者が個人的に、それも内密に依頼をしてくるのだから、何か特別な理由があるのだろうか。   「ひとまず、お入りください」  
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