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「男!?」
場所は変わり、オレの部屋。
居酒屋とは打って変わって、落ち込んだ様子の佐賀に、そんなに大学生の彼女が惜しかったのかと聞けば…
他に男がいるという。
「…やっぱり変すか?」
佐賀はずりずりと四つん這いで、オレの座るソファへとやってきた。
それから、床に座ったままソファへ頭をつけ、オレを潤んだ瞳で見上げた。
頬はすでに赤く色付いている。
中々自分の魅せどころ知っているらしい。
狙いなのか天然なのか。
「いや…変とは言わないが…」
買ってきたカクテルを片手に、佐賀はソファに頬をつけたまま語り始める。
人のことは自分も言えないが、その彼氏は随分と遊び人らしい。
「まぁ…特別に彼女がとかじゃなくて来るもの拒まずみたいな…あ、でも男は一応オレだけみたいで…まぁ、女の子と張り合ったって仕方ないんすけど…」
くたりとしながら、佐賀の指先が動く。
ソファに体育座りするオレの裸足の甲に。
なんともなしにソロリと撫でられた。
「オレって、付き合ったらやっぱデートとか電話とかちゃんとしたいタイプで…」
オレは聞きながらじっとその佐賀の指先を見ていた。
「ほっとかれると寂しいっていうか…なんか愛されてるっていう実感がなくて…」
指先が止まったと思えば、じっと見つめられていた。
ゾクリとする視線で。
少し、思った。
こんな子にこんな表情をさせるのは一体どんなろくでなしなのか…。
「なぁ、佐賀。彼氏の名前は?」
「…辻哲男」
そう言いながら佐賀はぐいと足首を引っ張り、その太腿に頬を乗せた。
辻哲男…か。
また、厄介なやつだ。
独占欲が強く、我が儘。
「瑛人さん…」
「……?」
見下ろせば、誘われた。
そう言うしかない。
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