その③

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そのまま、ソファへと倒れこむ二人。 佐賀の瞼に、千葉がチュッとキスをする。 それから、短く掛かる前髪を指先で退け、額にも。 凄く優しくだ。 その長さが南に似ているとも思った。 しかし、そんなつもりで抱くのではないと払拭した。 自分の額の髪を梳く、その腕に見慣れない模様。 それに佐賀は酷く、戸惑った。 興奮する体に、罪悪感を覚える心。 首筋にチュッと吸い付かれ、佐賀は体をびくつかせた。 「あ!」 「あ…悪い…つい」 鬱血の痕に千葉は謝るが、わざとだったかも知れない。 両手をTシャツの裾から、忍び込ませ佐賀の素肌に直に触れる。 ゆっくりとした至極丁寧な動作に千葉の性格がうかがえた。 「…ん……」 指先が胸の突起を掠めると佐賀が小さく声を漏らした。 それから、はぁと殺したような息を静かに吐く。 瞼が数回ひくひくと揺れた。 感じているのか… 上から見下ろす千葉はそれが、少し怯えているようにも見えた。 たくしあげ、脇腹を舌先でなぞる。 上へ上へと這い上がる千葉の舌。 それと一緒に、佐賀のベルトがカチャリと鳴った。 「あっ…」 僅かに、払い退けようとした腕を佐賀は握り締め堪える。 「瑛人さんっ…キスして…」 懇願するかのような瞳は、キスで何かを紛らわせる為なのか。 千葉は言われるままぐいと体を上げると、優しく唇を合わせた。 ゆっくり舌を差し込めば遠慮がちに絡められた。 その隙にバックルを外し、パンツをずりおろす。 瞬間、佐賀の体が硬直したのが解った。 やっぱり 「怯えてる?」 男には挑発にも捉えられる言葉だったが、千葉は本気で心配し聞いたのだ。 「……平気っす…」 言うが視線を横に逸らされ、千葉は苦笑した。
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