その③

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さわさわと佐賀の太腿の外側を撫でる。 伏せた瞼を縁取る睫毛がひくひくと揺れた。 それから、そのまま、滑らせ内腿へ。 やはり、体がびくつき無意識のうちに胸を手で押された。 「…佐賀?」 「……」 下唇を軽く噛み、そろそろと視線を千葉と合わせた。 千葉は内腿から手を退け、何も言わない佐賀の髪を梳き露わになった額に口づける。 ちゅっと優しく、慰めるように。 「無理して、浮気する必要ないんだけど?」 瞼へ、それから唇へ啄ばむように唇を寄せながら佐賀の瞳を覗きこむ。 「…すんません…」 今度は素直に佐賀が言う。 「…何で、オレ…」 好きな人ではなく、外の人で心の隙間を埋めなくてはならないのか… 心が軋んだ。 そんな、男を好きになった自分が悪いのか… やっぱりそんな男が悪いのか。 「彼女なら何人も作れんのに…なんであの人だけ…」 覆い被さっていた、千葉が体を避け隣に寝転がる。 それから、ぐいっと佐賀の肩に手を差し込みそのまま引き寄せる。 辻以外の男なんて無理だし。 彼女達が居なくなったとしても、辻が居なくなるのは耐えられない。 こんな想いをさせられているのに。 「もしかして佐賀、本気で辻が好きってことなんじゃないか?」 「え…あ、そっそうなんですかね…」 ちょっと涙目で、ちょっと照れくさそうに佐賀は笑った。 それから、そのまま二人は同じ布団で眠った。 抜かなくて大丈夫なんですか?と佐賀が気を使えば、千葉は歳のせいか性欲減退してるからという。 随分おやじくさいこと言うんですねと佐賀が言えば、よく言われると千葉が笑った。 `
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