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(あら…やだ、もうこんな時間)
カヨコはデスクにひろげていたバインダーを閉じた。
今日は木曜日、彼との待ちに待った週1デートの日。
彼とは付き合って二年目…まだ初々しく、熱々なのには訳があった。
それはまた後の話。
結った髪をほどいても真っ直ぐなストレートヘアーを維持している。
まさにカヨコの彼への思いを象徴しているようだった。
「深田さん、まだいたんすか?」
「甲斐君こそ」
カヨコは驚いて目を見開いた。
その瞳には女性の色を宿していた。
「今日何か雰囲気違うっすね」
「そう?」
甲斐は、カヨコの4つ下の後輩だ。
カヨコは密かに彼の気持ちに気づいていた。
それでも知らないフリをする魔性さも持ち合わせている。
(あなたには妻子がいるでしょ…いけない子ね)
カヨコは「お疲れ様」とニッコリ笑って去った。
甲斐はしばらくその場に立ち尽くしていた。
甲斐にはカヨコの瞳が飢えた魚のように見えて仕方がなかったからだ。
そんなことを思われているとは知らずご機嫌なカヨコ。
愛車に乗ってまず家路につく。
誰にも見つからないように待ち合わせのヨーグルトバーへ。
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