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彼は、わたしとそらを残して、今日もひろみの所へ足を運んだ。作業着のポッケには、一万円を詰め込んで。
わたしには、どこへ行くとは言わなかったけれど、もうひろみ以外、考えられない。彼が家を出ていくときは、仕事か、ひろみ。
わたしにも、そんな相手が欲しいなぁ。名前は……『あきら』にしよう。漢字は、『晃』。
あきらはわたしに、とても優しくしてくれるに違いない。顔は……、顔は……。
だめだ。
彼の顔が邪魔をする。
どれだけ思い浮かべても、少し上向きの大きな目と、すぅーっと伸びた鼻に、笑うと顔の半分がその面積を占める口。
それしか、出てこないや。
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