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陽性反応が出たのは、その年の暮れのこと。生理が遅れる前から、それは存在している気がして、ドラッグストアへと車を走らせた。
そらがわたしの腹に舞い降りたときもそうだったけれど、わたしはとても複雑だ。きっと、義務的に子供を産んで、育てていたのは、わたしだったのだろう。できたから、産む。産まれたから、育てる。身勝手な母親だ。母親なんて立派なものじゃない。それ以下。
産む、産まないの選択肢はない。わたしたちは結婚しているのだし、そらも兄弟が出来ればきっと、しっかりしたお兄ちゃんになる。
「おめでとうございます。」
そらを取り上げてくれた中年の医師が、ニコニコとしながらエコー写真をわたしに手渡す。
「ありがとうございます。」
わたしは、反射的に笑って、お礼を言った。
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