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彼は、何も言わなかった。もちろん、わたしも。やっぱり選択肢などは存在しなかったのだ。
「知ってる?わたし、仕事が好きなの。」
「うん。」
「ごはんを作るのは、苦手。」
「知ってる。」
彼にとって、わたしは何なのだろうか。わたしは彼のお世話係、それに伴い子供を産み落とすだけのものなのではないだろうか。
友達は、そんなわけないじゃないと、決まって言う。芹華は、幸せなんだよって、口を揃えて、みんな。
誰でも、何気ない日常に対して、それなりの不満をこぼしているもの。
でも、わたしは、そうなのだろうか。
本当は、彼も、そらも、愛していないのかも知れない。
愛しているのは、わたし自身なのかも知れない。
わたしは……。
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