そら

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わたしには、『お前』。 友達には、『うちの嫁』。 彼は何度、わたしの名前を呼んでくれただろう。考えても考えても、思い出せない。わたしは、名前でしか呼んだことないのに。 別にどうでもいいけどね。と、自分の中で強がりを言う。誰に言う訳でも無く、ただわたしはわたしの脳内で、架空の『誰か』に対して強がっているのだ。 流石に、彼が彼の親に対して『うちの嫁』と言ったときは、悲しかった。わたしにはちゃんと、名前もあるし、傷つくこころも悲しいこころも、全部持ち合わせているというのに。 わたしは仕返しをするように、彼を『あんた』と呼んでみた。みるみると鬼の様な形相になり、ただでさえ無口な彼は、いつもに増して何も話さなかった。 ほらね、腹がたつでしょう?
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