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わたしとそらが、まだ体を繋げて生きていた頃。
わたしが産気づいたのは、午後11時を少し回った頃だった。
これから入院するのだ、と何故か陣痛をこらえながら洗濯物を外に干して、ご飯を炊いた。これからわたしを病院へ連れて行かなければならない彼の左手には、缶ビール。
薄暗い病院の階段をすたすたと登る、彼。わたしは腹を抱えながら、痛みをこらえて手すりを掴む。
病室に鞄を投げ出して、彼は母に電話を入れ、明日は仕事だから、と帰って行った。
呆れたわたしは、おやすみ、と彼を見送る。
分娩中、胎児が仮死状態となった頃、彼は温かい布団ですやすやと眠っていた。
幸いにも産声をあげた我が子を見て、わたしの顔に安堵の表情が浮かんだとき彼は
「お疲れさん。」
と、わたしの顔を見ることもなく頭をぐしゃっと掴んだ。
わたしは、本気で彼を殺してやりたいと思った。
産後すぐの体じゃなかったら、きっとわたしは彼に馬乗りになり、首を締め付けただろう。
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