指針

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優也はついついその景色に見とれて立ち尽くしてしまう。 どれもこれも、優也のいた街では到底見られないものばかりだった。 どれくらいの時間そうやって歩き回っていたのだろうか、優也はしばらくするとようやく我に返った。 歩きすぎて少し痛む足をさすりながら、今の自分の状況を把握するために、慌ててもう一度辺りを見回し始めた。 この情景を見る限り、ここが優也のいた町とは違う場所であることは明らかだった。 しかも建物はおろか、人影すら見当たらない。 だがそれ以前にまず、これほどまでに立派な自然は、今の地球には存在しないはずである。 少なくとも現代の日本にはどこにも見られない。 「――じゃあ俺、今どこにいるんだ……?」 優也は未だに目の前の現実を受け入れ切れずにいた。 それもそうだろう。 「ゲームや漫画の世界での出来事」くらいにしか考えていなかった事態が、今まさに目の前で起こっているのだから。 「まさか違う世界とか……そんな面白い冗談は言わないよな……?」 ははは、と渇いた笑いを漏らしながら、優也は自分を納得させるように一人呟く。 だが、どう考えてみたところで今の優也には答えがわかりそうもなかった。 (はー……。ま、どのみちこのままここでじっとしてても意味ないだろうし、とりあえずもう少し歩いてみるか) そう思うと、優也はおぼつかない足取りで、ゆっくりと前へ向かって一歩足を踏み出した。
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