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「帰るのは難しいかもな……」
優也は諦め混じりにぽつりと呟いた。
自分でも思わず笑ってしまう程、小さく頼りない声だった。
優也にはこの状況から抜け出す方法が全くわからなかった。
現実でも無理だったのに、ここでどうにかしようだなんて馬鹿げている。
いっそ諦めた方が楽なんじゃないだろうか、とも思ってしまう。
元々現実にも飽きていたほどなのだ、帰れないとしても優也にとってはどうということもないはずだ。
そのはずなのに、そんな現実に戻りたいと思っている自分がいることに気づくと、優也は力なく自嘲した。
「あんな毎日でも、案外恋しいもんなんだな」
今思えば、本当に何一つ代わり映えのない毎日だったと思う。
何をするでもなく、ただ淡々と過ぎて行く日々。
虚しさだけが優也の心の奥底で渦巻いて動きを止めずにいた。
そんな日常の中、泣くほど辛い時でさえも、時間は振り向きもせずにただ淡々と通り過ぎて行った。
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