7人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、そんな無駄な「不変」の中にも、一度として同じ顔を見せないものがあった。
温かな光で街中を包んでくれたあの夕焼け空。
虚しさでいっぱいだった心の隙間を埋めてくれた、黄昏時のいつもの並木道。
そして何より、いつもくだらないことで笑い合えた、優也の大切な二人の親友――。
ほんの少し思い出すだけで、優也は胸がぎゅうっと締め付けられ思いがした。
二人は――暁と昴は今頃どうしているのだろう。
急に消えてしまった自分のことを心配してはいないだろうか。
そんな考えが頭に浮かぶと、優也は居ても立ってもいられなくなる。
帰りたいと、優也は初めて心の底からそう思った。
あの世界のすべてに、絶望していたはずなのに。
優也は急に淋しくなって、ついいつもの癖で空を仰いだ。
もしかしたら、あの街で見る空を無意識のうちに探していたのかもしれない。
だが、視界に広がるのは、冷たく澄んだ青色だけ。
あの町の面影は微塵も感じられなかった。
当然のことだとわかっていても優也はやはり落胆してしまう。
やはりもう、あの町に戻ることはできないのだろうか。
絶望に打ちひしがれ、知らず知らず唇から薄く溜め息が漏れる。
独り諦めかける優也。
すると突如その視界に、青空をまっすぐ二分する一筋の光が飛び込む。
最初のコメントを投稿しよう!