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「――あれ?」
だが、意識し始めた途端、たった今優也の視線が捉えたはずの光が姿を消していた。
(光が消えた?)
もう一度よく目を凝らして見るが、やはり見当たらない。
気のせいだったのだろうか。
そう思って視線を移そうとしていた時、ほんの一瞬、優也の視界を何かが掠めたような気がした。
――ほんの一瞬の出来事だった。
優也は瞬時にその「何か」の正体に気が付き、本能的に目で追っていた。
今度ははっきり見える。
(あの時の光だ!)
頭よりも先に体が動いていた。
痛む足を無理矢理奮い立たせ、青空を縫うように泳ぐ光を追って風のように草原を駆け抜けて行く。
さっきまでの沈んだ気持ちもすっかり忘れて、ふと気づけば優也はいつの間にか全力で走っていた。
今の優也には、ただあの光に追い付くことしか頭になかった。
初めての衝動に戸惑いながらも、軋む四肢を必死で振り、少しずつ光との距離を縮めていく。
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