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目標との距離は着実に近付いている。
……確かにそのはずだった。
だが、何かがおかしい。
遥か上空にあるはずの光が、心なしかさきほどよりも大きくなったような気がする。
単なる思い過ごしだろうか。
しかしその数秒後、優也が感じた不安が単なる気のせいではなかったということを、彼は身をもって知ることになった。
大きな光の塊が、優也目掛けて一直線に下降してきたのだ。
「――えっ? 嘘だろ……?」
残念ながら冗談ではないようだった。
こうしている間にも、光は轟々と音を立てながら、着実に優也へと近付いていた。
光が風を巻き起こす。
強風で優也の制服の裾がはたはたと音を立てて揺れる。
心なしかいつもより心臓の音が煩い。
極めつけに、空からは空気と熱とが擦れあって奏でる不協和音が、これでもかというほど響き渡っていた。
「……さすがにこれは避けらんないよなー……」
はらはらと涙が散る。
――俺、ここで死ぬのか。
短い人生だったな。
もはや口に出すことも叶わず、「さらば青春」の一文字が優也の脳裏をかすめ通った。
優也が十七年間の人生に自ら終止符を打とうとしていた最中に、とうとう光が目の前に飛び込んできた。
(ああ、死んだな俺)
優也は再び否応なしに光に飲み込まれ、目の前が白く染まった。
意外にも痛みはなかった。
――このまま死ねるなら案外楽かもしれない。
今なら怖くない。
このまま光に飲まれてしまえば――。
『――本当にそれでいいの?』
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