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チャプン――……
頬にひやりと冷水が触れた。
寄せては返す波の音が間近で聞こえる。
髪を靡かせる涼やかな風が、虚ろな頭に気持ちいい。
時を追うごとに少しずつ意識がはっきりしてくると、ようやく頭が回り始めた。
(ここは――海、か?)
ゆっくりと目を開けると最初に目に映ったのは、優也の予想通り、澄んだ海水だった。
眠りから覚めたばかりで頭が付いて行かず、ただしばらくぼーっと潮の満ち引きを眺め続けていた。
「ようやくお目覚め?」
「!」
突然見知らぬ少女に顔を覗かれ、優也は驚きのあまり反射的に飛び起きた。
「そんなに驚かなくても。ねえ、あたしのこと覚えてない?」
急になれなれしくそう聞かれて、優也は目の前の人物をまるで品定めでもするかのように上から下までじろじろとねめつけた。
ゆったりとした白い服に身を包んだ、金髪の美しい少女。
ぱっちりとした瞳は紺色で、長い睫毛に豪華に縁取られている。
「――あ、もしかして……」
「当ったり!」
全て言い終わる前に突然そう言われ、不覚にも優也は一瞬怯んでしまった。
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