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どこにでもあるようなありふれた町並みを、大勢の人間が忙しなく通り過ぎては消えていく。
杏子色の夕日に包まれてぼんやりと光る町はどこか懐かしく、沈みかけた太陽が家路に就く子供たちを優しく見守っていた。
夕映えの空を悠々と飛ぶ鳥たちも、雑踏の中を行き交う人の群れも、その脇に立ち並ぶ家々も、何もかもが黄昏の色に飲まれつつある。
そんな夕刻の温かな景色の中を、気怠そうに歩く一本の人影があった。
とぼとぼと歩くその人物はどうやら男子学生のようで、彼のおぼつかない足取りと同様に、逆光のせいかその表情にはどこかやる気がない。
少年はこの日もいつも通り、学校と住宅街との間に続く並木道をどこへ向かうでもなくただ淡々と歩き続けていた。
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