指針

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谷口優也、十七歳。 学校の成績は常に中の中、得意なものが無い変わりに特別苦手なものも無いという、至って平凡な高校三年生だ。 ただ毎日学校に通って授業を受けて、友達と他愛のない話をするだけ。 それが優也にとっては当たり前の日常であり、現実だった。 当然これから先も、こんな味気ない生活を延々と繰り返す羽目になるのだろう。 純粋にそう思っているが、だからといって優也は、今の生活に特にこれといった不満があるわけではなかった。 別にお金には困らないし、一緒に馬鹿話をして盛り上がれる幼馴染の親友だっている。 ただ、成長するにつれて、少しずつ疑問が芽生えるようになった気はしていた。 ただ同じことを繰り返すだけの毎日に対してなんの疑問も持たない世間の人々。 そして何より、何一つ努力もせずにすぐに諦めてしまうやる気のない自分自身に対して、「本当にこれでいいのか」と優也は近頃よく考えるようになっていた。
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