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それとほぼ同時に、気付けば優也は手を伸ばせば光に触れられるほどの距離にまで達していた。
やっとの思いで辿り着いた謎の光に向かって、確かめるようにゆっくりと手を伸べる。
しかし、すんでのところで不意に優也の動きが止まってしまう。
目の前のものに言い知れぬ違和感を感じ取ったのだ。
疑問に思った優也が目を凝らすと、淡く発光する物体の中に、ぼんやりと人影が見えた気がした。
その刹那、なぜか急に胸の辺りが熱くなる。
同時に、どうしようもなく懐かしいような、何とも言えない奇妙な感覚が優也の身体中に沸き上がった。
前にもどこかで見たことがある気がする。
根拠もないのに、なぜか優也はそう感じた。
これが俗に言う既視感というものなのだろうか。
奇妙な感情だ、と優也は思う。
だがすぐにそんな考えは意識の隅に追いやり、優也はそっと伸ばした手で、その人影を探る様に触れようとした。
その瞬間。
目の前の人影が不意に強い輝きを放ったかと思うと、戸惑う間もなく視界がぐにゃりと歪みだした。
「――えっ?」
非現実的な現象に驚きの声を上げた優也は、反射的に辺りを見回した。
優也の周りに存在していたありとあらゆるものたちが純白の光に包まれ、瞬く間に本来の色を失くしてゆく。
目の前にあったはずの並木道も、今ではすっかり白い光に溶けきっていた。
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