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アラスを誰も見ていない……。
見てない。
見ようとしないわけでもなく。
見ないフリをしているわけでもない。
まるで……
見えていないようだった……。
「ククク……何をそんなに驚いているのかね?」
アラスは晴喜に近づき、肩に手を乗せる。
晴喜は思わずビクッとしてしまう。
「皆、見えてない……?」
アラスの存在、そのものがないよう感じだ……。
怯えるように考える晴喜に、アラスは肩に乗せていた手を離す
見下ろすような形で、アラスは晴喜に顔を近づける。
「見えていない……という発言は正解とは言いがたいな」
そう言い、アラスは近づけた顔を下げ、周りを見渡す。
そして
ある一点に目線を止める。
アラスの目線の先。
ちょうど、ここから15メートル先に、門に向かって歩いてくる女子高生がいた。
その女子高生は、器用に携帯電話をいじりながら、真っ直ぐこちらに歩いてくる。
そのまま行くと、ちょうどアラスの左側を過ぎる事になる。
が、アラスは進行方向を塞ぐように左に三歩動く。
「え、何してんの……?」
アラスの異様な行動に勿論、晴喜は尋ねる。
普通に考えれば、このままではアラスと女子高生が、ぶつかるのがオチ。
だが、そんな奇妙な行動をしている本人は……。
「まぁ、黙って見ていたまえ」
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