その偶然、的中

20/25

4353人が本棚に入れています
本棚に追加
/453ページ
「…………」     奈央、無言。     「…………」     晴喜、沈黙……。         ……気まずい。       改めて思うが、奈央の誘いは好意や恥じらいなどはなく、それが“当たり前”という奈央の考えだった。     だが……       そのせいか現在、とても重い空気が渦巻いていた……。     昼食に誘われたものの、誘った本人、奈央はお弁当には手をつけず何故か、じっと静止していた。       “何で食べないの?”     晴喜はそれが聞きたくて仕方なかった。     さすがにここで、自分だけ食べるという行為は、何となく自殺行為に感じた。     仕方なく、晴喜は奈央が行動を起こすまで待機していた。       ……と、考えたが     さすがに間が持たない。       晴喜は軽く深呼吸をする。       晴喜、決意。     聞こう……       “何で食べないの?”     ……と     晴喜は右を向き奈央を見る。       晴喜、第一声目……   「……あ、あのさ」    晴喜の問いかけに奈央は反応し、そのままの体勢で目だけを左に動かし、晴喜を見る。     晴喜、第二声目……   「……な、何で」     晴喜、第三声目……   「食べ……」 「なっちゃーん!」     突然の声に晴喜の言葉が消された、無論、この声は奈央ではない……。     晴喜は突然の呼びかけに思わず驚き、声の方向を向く。     晴喜の席から一直線、教室の入り口にいる声主。       晴喜はその声主を、視界に映しだした時。       「…………!?」       さらに驚きは増した。       そこにいたのは……         「遅れてゴメンね、なっちゃん」             早川柚音だった……。    
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4353人が本棚に入れています
本棚に追加