その偶然、的中

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    晴喜と柚音     その距離3メートル。       「…………」     晴喜は無言のまま、視界に柚音を映し続けている。   無言というより、呆然というべきだろう。     「あれ?」     柚音は晴喜の視線に気づき、晴喜の方を見る。   晴喜は思わず目が合ってしまい、慌てて目線を別の方向に動かす。     柚音はその動作に特に気にすることなく     「こんにちは」     ニコッと笑い、晴喜に挨拶をする。     晴喜はまさか声をかけてくるとは、思ってもいなかった。     「……ど、どうも」     動揺しつつも何とか返事をするが、今の状況で顔を合わすことができない。   なぜなら   晴喜は冷や汗と共に、顔が赤くなり始めていたからである。     面と面が向かえば失神するのではないだろうか……。       「あれ、もしかして……」      柚音は晴喜の机の上にある。 まだ何も手をつけていない買い弁のパンと、 奈央のまだ何も手をつけていないお弁当を見て    「なっちゃんとお昼食べる予定だったの?」     無論、この質問は奈央にではなく、晴喜に聞いている。       「えっ、まぁ、な、なんというか……」     晴喜は動揺のあまりか、舌がうまく回らない。   だが   何とか答えようと、真っ白な頭の中で言葉を探すが、晴喜が次の言葉を出す前に      「……うん、そんな感じ」      奈央が先に言葉を出した。     「へぇ~、なっちゃんが他の人とお昼食べるなんて珍しいね」       「……うん、余り者同士だから」       “違います”     ……と晴喜は弁解したかったが、今の状況と立場と空気を考え、晴喜は……       「そ、そう、あ、余り者同士だから」         便乗した……。    
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