その偶然、的中

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    「……柚音」     と、奈央。     「……時間」     奈央はそう言い、教室の黒板の上にある時計を指さす。       「あっ、時間なくなっちゃうね」     時刻は13時10分     昼休み終了まで残り15分だった。     「……時間ないから、さっさと食べないと」   「うん、じゃあ食べよっか」     柚音は奈央の席の前にある空いている席を、奈央の席と向かい合うように動かし、椅子に座る。   柚音は持っていたお弁当を、机に広げると晴喜の方を見て。     「私も一緒にお弁当食べていいかな?」     晴喜は再び不意を突かれ、ドキッとする。   「も、もちろん、全然、オッケー……です」     やや堅苦しい日本語となるも、柚音はクスッと笑う。     「ありがとう  えっと、その……」     お礼を言うも、柚音は少し困った表情する。   「…………?」   晴喜はその表情の意味がわからず、変に不安に包まれる。     すると、柚音は突然晴喜の机の下を見る。     机の下というより、晴喜の足元の何かを探すようにして見ている。    「…………あ」     晴喜はふと気づく。   何故、柚音が困っている表情をしているのか?   何故、晴喜の足元を見ているのか?     それは……     「……名前?」     柚音が見たかったのは、足元というより、上履きに書かれた名前を見たかったのだろう。     「うーん……ごめんね、まだクラス全員の名前、覚えてなくて」     柚音は少し恥ずかしがりながら言う。     「い…いや、別にいいよ、えっと…俺、乙部 晴喜……その、よ、よろしく……」     「私は早川 柚音、よろしくね、ハル君」     不正解、ハルではなく晴喜。       「……いや、俺、晴喜」     「あ、あれ、ごめんね、ハル君」       「……まぁ、いっか」       と、言いつつ……           晴喜、少々ご満悦。    
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