その偶然、的中

25/25
4353人が本棚に入れています
本棚に追加
/453ページ
    短くも楽しい時間が流れている     初恋の相手とこうやって話したり、一緒にお昼を食べたり     晴喜自身、こんな展開になるとは思っていなかった。       “幸せなんだろうな、今……”     そんなことを晴喜は思う。     晴喜からして見れば、今日は特別運が良かった日なのだろう。     こんな偶然が……       「…………」       ……偶然?     「どうしたの、ハル君?」    「……あ、いや、別に何でも……」     恐ろしいくらい奇妙な違和感を感じた。       晴喜はふと思う     なぜ、今柚音と一緒にお昼を食べているのか?     偶然?     偶然こうなった?       ……違う、奈央と一緒にお昼を食べることになったからだ。       では、なぜ奈央と一緒にいたのか?     偶然?     ……違う、奈央と一緒に教室に戻ってきたからだ。       では、なぜ奈央と一緒に戻ってきたのか?     偶然?     ……違う、お互い図書委員の集まりがあったからだ。      では、なぜ晴喜は図書委員を選んだのか?     偶然?     ……違う、ここに全てが繋がる     晴喜は自分の意思で、図書委員を選んだのではない。       あの一通のメールでこうなった       『図書委員に立候補しろ』        その指示でこういう展開に導かれた……。     その指示を命じた人物……      彼はこうなる事を全て知っていた。     全ての偶然を必然のようにわかっていた。       晴喜はゾッとする……。       これは偶然なんかじゃない、全てが必然。       その偶然という必然を知っていた人物。       それが彼……           堕天使、アラス ただ1人だった……。      
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!