その悪意、逆転

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      けして、相手チームが弱いわけではない。       そして   晴喜は運動センスはあるものの、ここまで凄まじい成績を出すのは難しい。       では、なぜこのような結末になったのか?     それは実に簡単な話だった。       全て球がどこに来るか読めていたからだ。     どのコースにどんな球が来るのかを、わかっていれば打つのは容易い。       では、なぜわかったのか?      その理由は実に簡単だ。       それは……         あの男の指示に従ったからである。     試合が始まる前、メールで    『全て初球で打て、 1打席目は外角高めのカーブ 2打席目は胸元に甘いストレート 3打席目は……』     と、こんな感じのカンニングが用意されていた。       だから打つのは容易い。     打てて当然。     スーパールーキーでも何でもない       だからこそ       面白さなど感じられなかった……。        結局、この後9回裏、味方がきっちり相手打者を抑え、11対3で勝利した。     試合が終わった後。     「やったな!晴喜、お前マジでスゲーよ!」     3年の野球部の主将が嬉しそうに、晴喜に話しかける。       「どうも……」     しかし、晴喜には喜びも嬉しさもなかった。     「これで新入生へのアピールもバッチリだな! ……とはいえ、やっぱり惜しいよなぁ、晴喜が野球部にいてくれたらよぉ」     「まぁ、いつもこんな感じですから」     「あれ、でも晴喜、今日用事あったんじゃねーの?」      「いや、まぁ、何となく……」      本当は今日は助っ人に、行くつもりはなかったのだ。      ここに来たのは晴喜の意思ではない。       一通のメールからの指示……。       その内容は         『野球部の助っ人をしろ』        その一文だけであった。    
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