その悪意、逆転

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    晴喜が2年A組に到着した頃。       同時刻。       女子バレーが部活動を終え、更衣室からジャージ姿ではなく、制服姿の部員達がゾロゾロと出てきた。       「ユズっちー、一緒に帰ろ~」     一人の女子が柚音に話しかける     「あっ、ゴメンね、教室に鞄おいてきちゃってさ――先帰っていいよ」     鞄を持っていない柚音を見て、柚音の友達は納得する。       「んー、わかった、そんじゃユズっちおつかれさーん」     「おつかれさまー」     柚音は手を振り皆とは別方向に歩き、鞄が置いてある2年B組に向かう。       校内は人気がないため、辺りは静まり返っていた。     柚音は階段で3階まで上がる。     階段に一番近い2年A組の隣にあるのが2年B組。     教室内はA組同様人はおらず、窓から入る夕日の光は少し暗くなり始めていた。       「あった」     柚音は一番後ろにある自分の席に向かい、席に置いてある鞄を見つける。     鞄の中身を確認し、忘れ物がないかをチェックする。     「うん、問題なし」    そういい、鞄を持ち、教室を出ていく。     そのままの足取りで2年A組を通りすぎ、階段の前に来る。       このまま階段を降りれば、何事もなく普通に帰れる。       いつも何十回と何百回と、昇り降りしている階段。     ただ普通に降りれば良いだけ         だが……         それはできない。       普通にできない。         何故できない?         そう、組み込まれたからだ……    
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