その悪意、逆転

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        「…………ん……」       目を開ける。       目に映る景色は白い天井と白い壁、そして窓からの風に揺らぐ白いカーテン。     その景色を見ているのが柚音だった。       「……あ…れ……私……?」     まだ思考がうまく働かないものの、自分が白いベッドに横たわっているのに気づく。     だが     何故自分がこんな場所で寝ているのか、わからなかった。       「あっ、良かった……気がついた?」     側で誰かが柚音に問う。     柚音はその声の方向に向く。       「あ……ハル……君?」     柚音の目の前には晴喜がいた。     晴喜はベッドの横にあるイスに座っていた。     「……ここ……どこ?」     「え、あぁ、保健室だよ」      二人のいる場所は、学校の一階にある保健室である。     「あれ、何で……私、保健室に……」     そう言い、柚音は体を起こそうとするが……     「あっ……う……!」      それと同時に、柚音の身体中に激痛が走る。     「だ、大丈夫か!」     それを見かねた晴喜が、慌てながら心配する。     「大丈夫だよ、ハル君、ちよっと痛むけど」     そう言い、心配してくれる晴喜に柚音は笑顔で答える。       「でも、私何で保健室で寝てたんだっけ……」     その言葉に何故か晴喜は黙り込んでいた。     「確か……私階段で……あれ、それから……」     柚音はあの時の記憶があやふやになっていた。     「俺が通りかかった時、きみが倒れてたんだよ」     考え込んでいる柚音に横から、晴喜が言葉を発する。     「そっか……私、貧血で倒れたのかな……」     「……かもね」       そう言った晴喜の表情は……         何故かつらそうだった……。    
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