その悪意、逆転

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    メール通りだった。         メール通り、柚音は2年A組を通り過ぎ、2年B組に入る。     その様子を晴喜は2年A組の教室から、隠れて見ていた。     そして、しばらくしてから柚音は2年B組から出てきて、2年A組の前を再び通り過ぎる。         アラスのメール通り。       17時36分――。       柚音は2年A組付近にある階段に向かっていた。       晴喜はその光景を見て、緊張感はピークを達していた。         この後、自分がする行動……       “全力で走って近づき、突き落とせ”         “全力で走る”     こう書かれているのは 力を躊躇(ちゅうちょ)してはいけない、という意味だろう。     下手に弱めれば、事態は大きく変わってしまうのかもしれない       そして、柚音は階段を降りる。       一段……       そしてまた一段……         タイミングは今。       晴喜は潰れそうな心を抑え、全力で……           2年A組を飛び出す!         そして、全力疾走で柚音との距離を縮める。       その距離、10メートル       8メートル……       柚音の後ろ姿はもう見えている       7メートル……       6メートル……       これから傷を負わせる相手は、晴喜の初恋の人。       5メートル……       4メートル……       晴喜は自分のする事が理解出来なかった。       3メートル……       彼女を傷つける、それは自分の為。       2メートル……       それは分かっていた、だからもう……       1メートル……           後戻りは出来なかった。           晴喜は走る勢いと両手の力で躊躇する事なく         無防備の柚音を           突き落とした……。        
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