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あの惨劇から40分後。
「…………くん」
今までもあの光景が
「………ル君?」
何度も脳裏に映し出された。
「ハル君!」
「えっ!?」
晴喜は驚き思考を止める。
気づくと柚音が何度も、晴喜の事を呼んでいた。
「どうしたのハル君、ずっとボーッとしてたよ?」
「あ…………ゴメン」
晴喜は柚音を見るたび、突き落とした自分の両手が震えていた
震える両手をギュッと力を込め、自然な表情を作った。
「そんなことより、そろそろ帰った方が良さそうだな」
保健室の窓の外は夜一面に覆われ、壁に掛かっている時計は、18時20分を指していた。
「あ、もうこんな時間なんだね」
さすがに、下校しなければならない時間帯だった。
柚音はベッドから起き上がり、ゆっくりと降り、立ち上がる。
だが、まだ傷が癒えていないため、身体はフラフラしていた。
「だ、大丈夫か?」
晴喜は慌てて立ち上がる。
「うん、大丈夫」
心配する晴喜に、柚音は笑顔で答える。
だが
その笑顔には、やせ我慢が混ざっていた。
「……帰りとか、大丈夫?」
「大丈夫、私家近いから」
「…………そっか」
ここは“家まで送るよ”とか気の利いた言葉を言うべきなのだろう。
しかし、今の晴喜にはどうしてもそれが、言えなかった。
「行こ、ハル君」
そう言い、柚音は先に歩き出し保健室の出口へと向かう。
晴喜は歩く柚音の姿を視界に入れる。
「………………」
柚音の手や足、腕に痛々しい程の傷やアザがいくつもあった……。
「…………ゴメン」
晴喜は柚音に聞こえないくらいの声で、小さく謝った……。
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