アヤサ  懐妊

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 タクの運転する車で約一時間。移動中話し掛けるタクに適当に返事をして話は聞いてなかった。頭の中はこれから会うタクの両親の事で一杯だったから。  タクの家に着いた。驚いた。家が立派だから。  豪邸と言っても過言じゃ無いかも。 「タクって金持ち?」  前から薄々感じてはいた。仕事をすぐ辞めるタクは絶対にそんなに稼いではいないのに、金遣いが荒いから。  今更そんな事訊いてしまう。 「親父が社長だからな」  素っ気なく答えると、家に入る。私もオドオドと後を着いて行き、玄関に入った。  広い玄関には女の人が既に居て、私達を待っていた様だ。タクの母親だ。  五十代位の上品な身なりの人。薄化粧の顔は美しいが、何となく冷たい眼をしていた。 「どうぞ入って」  私達は案内され、広く綺麗に片付いた客室に入った。  ブランドなんて縁が無いし詳しくは無いけど、どれも高そうな家具で驚いた。 綺麗な模様がある気品ある家具とか、素人目にも高いだろう事がわかる。……傷とか付けてしまわないように気を使う。今までこんな部屋に縁が無かったから怖じ気付いてしまう。 「妊娠しているから大変でしょ。座りなさい」  そう言われて、私はフワフワのソファーに座った。
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