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正直、私はサトミさんに苛立ちの感情を抱いた。
嫉妬心がそうさせたのよ。
風邪を引いたときに健康の有り難みが分かるみたいに、普通の生活という贅沢は、失った時…私みたいな苦渋の生活を送る様になった時に分かるのよ。
貧しくたって、愛に満ちた生活なら、幸せだという事も分かった。
私はお金も愛も無い。
暴力だけ。
お父さん、お母さん…私、今まで凄く幸せだったんだね。
今になって知ったよ。
いつも笑顔のサトミさんは私から遠い存在。
「光」の存在のサトミさんは「陰」の存在の私からは疎ましいのよ。
サトミさんはミクの座るベンチに寄って「待たせてゴメンね」と謝っている。
買い物終わったのね。
私も二人の所に行った。
「アヤサさんは服買わないの?」
「買う気無いから」
「あら…。それなのに付き合わせちゃって御免なさいね。
お詫びにクレープ奢るわ。地下に美味しい所があるのよ」
ほら、その余裕ぶり。嫌味にさえ思えるわ。
「いえ、そんなのいいわよ」
冷たく断ったので、帰宅になった。
クレープは大好きだし食べたいけど、サトミさんに奢られるのが嫌だった。
帰りの車で、スヤスヤ寝ているミクに「可愛い」と言うのでさえ苛立った。
サトミさんは育児なんてしないで、子供を可愛がるだけだから。
私の黒い感情はサトミさんにまで牙を向く。
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