アヤサ  雑居房

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 98番――   これが私の名前の様なものになった。  看守も、雑居房の女達も、私を「98番」と呼ぶ。   受刑者番号が98だから。  私が一番最後に下獄したからか、同居部屋の奴等は起床後の部屋の掃除の時にうるさく指図する。   先輩入居者のイビリの始まりだ。 「さっさと窓を拭け、ドベ!」 「グズグズするな!98番」 「雑巾は固く絞れよ」  ったく。口うるさいったらありゃしない。   私の事を「ドベ」って下っ端扱いするけど、先に下獄した奴が偉いって訳じゃないだろって思い腹立たしい。   年功序列社会。  でも面倒だから素直に従っておく。反抗したら何されるか解らないし……。   それにタクの理不尽な暴力よりはマシだから。   ここでは喧しく言われたりはするが、肉体的暴力は無い。   暴力など、刑務所で規律を乱す行為を行ったら、行刑成績評価にマイナスが付くから。   そのマイナスにより、娯楽の時間にテレビが見れなくなったり、面会を禁じられたりの罰が下ったりする。   がんじがらめの厳しい規則生活。遵守項目に従う毎日は肉体的にも精神的にも辛いが、暴力を受ける心配も無い為、この遵守項目に守られてもいる。
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