25567人が本棚に入れています
本棚に追加
98番――
これが私の名前の様なものになった。
看守も、雑居房の女達も、私を「98番」と呼ぶ。
受刑者番号が98だから。
私が一番最後に下獄したからか、同居部屋の奴等は起床後の部屋の掃除の時にうるさく指図する。
先輩入居者のイビリの始まりだ。
「さっさと窓を拭け、ドベ!」
「グズグズするな!98番」
「雑巾は固く絞れよ」
ったく。口うるさいったらありゃしない。
私の事を「ドベ」って下っ端扱いするけど、先に下獄した奴が偉いって訳じゃないだろって思い腹立たしい。
年功序列社会。
でも面倒だから素直に従っておく。反抗したら何されるか解らないし……。
それにタクの理不尽な暴力よりはマシだから。
ここでは喧しく言われたりはするが、肉体的暴力は無い。
暴力など、刑務所で規律を乱す行為を行ったら、行刑成績評価にマイナスが付くから。
そのマイナスにより、娯楽の時間にテレビが見れなくなったり、面会を禁じられたりの罰が下ったりする。
がんじがらめの厳しい規則生活。遵守項目に従う毎日は肉体的にも精神的にも辛いが、暴力を受ける心配も無い為、この遵守項目に守られてもいる。
最初のコメントを投稿しよう!