アヤサ  雑居房

4/9
前へ
/1109ページ
次へ
 共同生活は、思っていた通りかなりキツい。   就寝時間は鼾でうるさいし、起床したら直ぐに布団を畳む。低血圧なのか朝に弱い私は寝起き直ぐの行動はキツい。  布団の畳み方や、部屋の掃除が雑だったりすると、看守が来た時の点検で全員が減点される恐れがある。だから皆しっかりやるし、雑だと同室の奴等に口うるさく言われる。減点は累進処遇に響くから。   累進処遇という制度……受刑者は1から4級に分かれている。下獄したての受刑者は、4級。   そして、月に一度の進級審査で、3級、2級へと上級が決まる。  有期刑は2級、無期刑は1級にならないと仮釈放は望めない。   上級により地位も待遇も良くなるから皆必死にもなる。   厳しい毎日。そして同室の奴等の指図、嫌味、罵倒……幼稚な嫌がらせもある。   辛くて当然だ。   罪を……償う場に居るのだから。   独房に居た時の様な安らぎを求めてなんかならない。   私の罪……児童虐待による殺人未遂。   そして――まだ危険な状態のままのミク。   殺人未遂は殺人になるかもしれない。   でも、虐待による自分の子の殺人は『過失致死』になる場合が多いけど。  私が言うのも変だけど、何か、おかしいわよね。  ……罪を償う事無く、ただ独房で安息を貪っていた受刑者の私。  改めて自分が浅ましく思い、嫌になった。
/1109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25567人が本棚に入れています
本棚に追加