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食事の時間。皆に同じ量の食事が配布される。大食いも少食も関係なく、平等に分け与えられる食事。
正直、タクと暮らしていた時より良い物が食べられるようになった。
だから食事内容には文句はない。
ってか、文句なんて言える立場ではないけどね。
数少ない娯楽時間の一つ、食事。
不満と言えば、与えられる食べ物ではなく……一緒に食事をする奴等、だ。
「オイ!人の飯盗るんじゃねーよ!」
遠くの席で、声を荒げる受刑者。
どうやら自分の食べ物を隣の人に盗られたみたい。
「ぐずぐず食べてるのが悪りぃんだよ!ノロマ!」
「何!」
そして、盗った者と盗られた者の取っ組み合いの喧嘩が始まる。
近くの者は笑って見て、看守が怒鳴りながら止めに入る。
食べ物を盗られる……そんな些細な出来事も、喧嘩の原因になったりする。
小学生の給食時間より行儀が悪いんじゃない?
食べ物の恨みは怖いってヤツかな?
私も、よく食べ物を盗られたりする。
……今だって、看守が喧嘩を止めに入ってる隙に隣のヤツ……同室で嫌がらせしてくる女、92番が、私のコロッケを素早く取って食べた。
だけど……私は怒鳴ったりしないし、勿論、喧嘩なんかしない。
ただ、睨むでもなく無表情で相手を見つめ……再び食事する。
「チッ。気味悪りぃ」
眉間に深い皺を寄せ小声で言う92番。
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