温もりを、もう一度…。

アヤサ 雑居房

　私を睨みながら見下す、この女、86番……確か、皆には絵理子と呼ばれてたっけ……。

　普段、私に地味な嫌がらせをするのは、87番、92番、93番。この雑居部屋の人達の中で年齢が高い三人。
　絵理子さんは私の次に若いだろう。見た目は三十歳前後、長くて癖がある髪が特徴の人。　
　整髪料なんて使えないから癖毛の人って大変なのよね……。　
　大人しい人で、今まで私に嫌がらせなんてしたことは無かった。トロい私にうるさく注意した事も無く、寧ろ、無言で布団畳みを手伝ってくれたりもした。　

　嫌な奴が多い中、絵理子さんはそうじゃないと思ってた。

　なのに何故、いきなり蹴ってきたのよ？私は何もしてないで、ただ座ってただけなのに。　

　部屋の皆、驚いて絵理子さんと私を見ている。