アヤサ  面会

2/32
前へ
/1109ページ
次へ
 自由時間、面会人が来たと聞いて、面会室に向かった。     来てくれたのは、サトミさん。刑務所は住んでいる街から離れているので、片道一時間は掛かるだろう。遠いのにわざわざ来てくれたんだ。  アクリル板越しに見た姿。普段から派手な格好はしない人だけど、場所が場所だからか地味な服装だ。そして薄い化粧の顔は悲しみを浮かべている。     面会室は刑務官も含め、三人。誰も話さず、静かな部屋。  ……折角来てくれたのに悪いけど、話すことなんて……無い。     まさか刑務所生活の愚痴なんかする訳にいかないし、何を話せばいいか……。   あっ。   謝罪した方がいいのかな?やっぱり。  今回の件でサトミさんにも凄く迷惑を掛けたから。   思えば、ミクに関してはサトミさんに迷惑ばかり掛けた。   そして、最後にこの結果。  ……申し訳ない、わよね。  「あの……」  沈黙を破った私の小さな声に、俯きかかっていたサトミさんの目が私に向かった。   綺麗な……悲しい目が私を見つめる。  「今回は……その……、ご免なさい……」  叱られた子供みたいに、おどおどしながら謝った。 「それは……ミクちゃんに言うべき言葉よね」  悲しい顔でサトミさんが言った。   声まで悲しげだからだろうか……?   胸が痛んだ。
/1109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25567人が本棚に入れています
本棚に追加