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そして又、沈黙の時が流れた。
「謝れれば、ね」
私は絞るように、声を出す。微かに声が震えた。
ピクッと、サトミさんの目が見開く。
「このまま……死んじゃったら……謝ることも、出来な」
「そんな事言わないで!」
喋りきる前にサトミさんが叫んだ。
そして、私の背後に居る刑務官に「すみません」と言い頭を下げる。
大声を出したから睨まれでもしたのだろう。
「私は、あれからミクちゃんの面会にも行っているの……。
まだ、眠ったままだけど……私は、回復を、祈っているのよ……。
母親のアナタ、が、そんな事……言わないでよ」
話しながら……泣いてしまったサトミさんを前に、私は自分の浅はかな言葉を後悔した。
手を掛けた私が「死んだら」なんて、よく軽々しく言えたものだ。
自分への怒りで、手を強く握った。爪が食い込む。
「ごめん……なさい」
謝ってばかりの自分。
情けない。
そして、短い面会時間が終わり「また来ます」と静かに言い残し、涙を拭いながらサトミさんは帰っていった。
見送る背中にもう一度、心の中で謝罪した。
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