アヤサ  面会

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 自由時間。  両親に募る償いの気持ちを、手紙に書いていた。    筆不精だから、中々文が進まない。手紙なんて書いたの何年ぶりだろう?   年賀状は勿論、携帯電話のメールさえ適当な私が便箋に書く手紙に苦労するのは当然の事だ。  頭語は「拝啓」だったよね?「前略」でもいいや。 そして時候の挨拶――今なら「寒さが身に染みるこの頃ですが」かな?  ……正しい手紙の書き方なんて分からないや。丁寧に書こうとすればする程、文が進まない。  この際、手紙の形式に捉われないで、下手な文章でもいいから謝りたい今の気持ちを伝えればいいんだ。   そう思って綴った「ごめんなさい」の、五文字。   たったの五文字では伝わりきれない、謝罪の意思。   この便箋いっぱいに「ごめんなさい」と書いても足りないだろう。   少しだけ字が書かれた便箋を見る。下手な字だと自分で呆れた。  『お父さん、お母さんへ   迷惑をかけてごめんなさい   悲しませてごめんなさい   ミクを  』  何度も書き直したからそれしか書いてない。  手紙の形式より、謝りたい気持ちを伝えたかったから、小学生の時に友達に書いた手紙みたいに簡単だ。  なのに――この次に綴る言葉が思いつかない。
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