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『ミクを』
それから先が書けないまま、時だけが無情に過ぎた。
だって、その先になんて書けばいいの?
『ミクを虐待してごめんなさい』
『ミクを愛せなくてごめんなさい』
『ミクを傷つけてごめんなさい』
どの「ごめんなさい」も、書いたら余計に両親を悲しませてしまう気がした。
でも、この手紙でミクにしてしまった事も謝りたい。
手紙の文章を考えていると、当然、両親の事が頭に浮かぶ。
幼い頃、両親は休日に水族館や遊園地に連れていってくれたっけ。
海外旅行をしたと言う友人が羨ましくて、「私も海外旅行したい」なんて行って両親を困らせた時もあった。
そう言えば私、学生時代に「お小遣いが少ない」なんて文句言ったりもしてたな。
愛され、養育され、お小遣いだって貰うのが「当たり前」だとか生意気な事を思ってた昔の自分。
その癖自分が親になると愛情すら与えてあげられなかった。
書きかけの便箋に涙が落ちた。
情けなさ、悔しさ、自分への怒り、申し訳なさから溢れた涙……。
落ちた涙を拭いながら思い出したのは、出産した時に病院に来てくれた時の両親。
ぎこちない手つきでミクを抱き締めてくれてた。
両親のミクへの愛情を思うと……涙が溢れるばかりでとても、手紙が書けそうになかった。
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