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最初、義父さんを見た時は一瞬誰だか分からなかった。
その理由は、不自然にフサフサした髪に見慣れない眼鏡姿、鼻の下にはこれ又不自然な髭があったから。
鬘(かつら)にだて眼鏡、そして付け髭……変装してる。
体裁を気にする義父さんが刑務所の面会に行くのだから、万が一知人に見られたらの為に変装したのだろう。
タクは変装なんかはしてないけど、一緒に住んでいた時みたいな、ボサボサ頭ではないし、ヨレヨレの服でもない。
……タクは義父さんと不仲だけど、再び一緒に暮らしたのかな?
そんな事を思いながら、面会室の椅子に座る。
アクリル板越しに、タクと義父さん。
義父さんは私と目が合うと露骨に顔をしかめた。
「こんな所に来なくてはならないなんて……。全く、とんでもない事をしてくれたな」
とんでもない事。
確かに、その通り。
でも、アンタは私達が困っている時に見捨てたわよね。
つい、出そうになった反論の言葉を飲み込み、私は義父を睨んだ。
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