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何だアイツ。
私は義父に呆れ返ってしまった。
義父の姿は見えなくなり、目の前はタクだけになった。
……何故タクは残っているのよ。義父と一緒に出て行けばいいのに。
タクに対しての憎しみの感情が、そう思わせる。
虚ろな目のタクが、やっと口を開き語りだした。
「……オヤジは言ってなかったけど、あのマンションの部屋を出て、部屋にあった物は全部家の押し入れにしまったから。」
ボソボソと語るタクに「そう」と冷たく返事をした。
離婚するんだし、あの部屋にあった物がどうなろうが関係ないし、興味も無い。家具だって殆どがタクの実家から持ち出した物だったし。それが戻っただけだ。
「……で、アヤサの物だけと、アヤサの親に連絡して引き取ってもらう事になったから」
「……」
私の親に……。
「親」と聞いて胸が痛んだ。
荷物を受け取った時、両親はどんな心境だったのだろう。
どんな顔をしてたんだろう?
「……あのさ、タク……その時、何か言ってた?」
「は?誰が?」
私はタクの問いに苛ついた。「誰が?」って私の両親に決まってるでしょ!この馬鹿!
「私の親よ!荷物を受け取った時、どうしていたか、何か言っていたか訊いてるのっ!」
少し声が荒げてしまった。
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