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苛立った私を見て、タクはポカンとアホ面になる。……以前みたいにキレたりしないんだ。
そして、語る。
「あぁ……アヤサの荷物はそんなに無いから、俺とオヤジが直接持って行ったんだよ。アヤサの家に……」
「その時、親は……?」
鼓動が高鳴る。
息苦しい。
ギュッと握った拳の中は凄く汗ばんでいる。
「……泣いてた。」
「――!」
「泣いて、謝っていた。その、頭を下げて……。俺は何も言えなかったが、その、親父が……」
そこまで言って、タクが視線を落とした。
親父が?義父のヤツ、私の親に何か言ったの?
「タク……義父さん、まさか、私の親に何か言ったの?」
するとタクは、言いにくそうに言った。
「あぁ……」
「何て言ったの?教えて」
「……じゃあ言うけど。
『アヤサさんはとんでもない事をしてくれた』『とんだ迷惑を掛けてくれた』『とんでもない女と結婚させられた』など……」
私はショックを受けた。
私の事を愚弄するのは構わない。だが、私の事で両親が責められ、それで両親は泣いて謝った。
あんな男に、両親は頭を下げて謝った。
悔しいって言うか――――申し訳ない。
涙ぐむ。
私の涙に気付いたのか、タクは気まずそうな顔になる。
グシャグシャっと頭を掻いて、再び下を向く。
しかしパッと顔を上げ、タクは私を見つてきた。落ち付きが無い。深刻な顔が私を見つめる。タクがこんな顔をするのは珍しいかも。
「俺よ」
表情を崩さずタクが言う。
「又あの家に戻ったが……親父が言うんだ。『お前はもう二度と外に出るな』『恥曝し』ってよ。
当然俺もキレて、殴り掛かったが……ダメだった。
面会に此処に来るのだって、近所にバレないようにコソコソして俺を隠すんだ。
俺……車だって処分されたし、中々外に出れねぇんだよ。親父のヤツ、俺を家に閉じ込める気だよ。
だからもう面会に来れないんだよ、最後なんだ」
タクの目が涙ぐんだ。
私はタクの話しを聞いて、驚き、義父のやる事に恐怖さえ感じた。
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