温もりを、もう一度…。

アヤサ 面会

　自由な生活の約束と引き換えに私との離婚を決断したのはタクなのに、私と別れたくないと言うの？また再婚？ふざけないでよ。私はやっと離婚が出来て嬉しいのに。　

　第一、本当に私を愛して離婚をしたくないのなら、親から縁を切ると言われても離婚なんかしないわよね？　

　義父も、タクはもう誰かに依存しなきゃ生きていけないと分かり切って、離婚を決断させる為に「見放す」なんて言ったのでしょうね。

　そして、今度は息子を引き籠もりにさせる義父。　

　……タクは、更に堕落していく事なんて、容易く想像できる。　

　なのに再婚なんて……出来るわけが無い。　

「言ったでしょ。私はもうタクを愛してなんかいないの。だから、再婚なんて有り得ないし、もう会わないと思う」

　そう言い放つ。　

　こんな事を言う私は、冷たい女なのだろうか。　

　意外なのは、すぐにキレて暴力を振るってきたタクが、今、怒らない事。　
　此処が刑務所という場所だから？
　それとも、妻の逮捕、娘の重体、離婚など状況の変化でタク自身も疲れ切ったのかしら？　

　生気が無い顔をしたタクが、涙ながらに言う。　

「俺が……殴ったりしたから……なんだよな？」

　私は、静かに頷いた。