アヤサ  面会

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 タクは、兄であるリョウヤさんと常に比較され、「出来が悪い」と言われてきた。   特に義父は、リョウヤさんばかり可愛がり、タクを疎んでさえいた。   愛に飢えて育ったタク。   欲しい物やお金は充分すぎる程与えられていたが、充分な愛情は与えられなかったタク。   兄ばかりが誉められ、大切にされ、タクは常に心に闇を抱いていた。   愛に飢えていたタクは、やがて私を愛してくれた。私もタクを愛した。   愛し合った。   しかし、タクは、愛し方が分からなかった。    物を好きなだけ与えられ育ったタクは、物を大切に扱う事は出来ず、粗末に扱った。   気に入らなくなったら簡単に捨てたし、壊した。  そして私も物の様に……粗末に扱われるようになった。   タクが私に暴力を振るいながらも離れようとしなかったのは、愛していたから。   私を、愛していたから。   タクの歪んだ愛の形を今、理解した。
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