アヤサ  面会

22/32
前へ
/1109ページ
次へ
「タクは私を愛してくれてたんだよね……」  そう言うと、コクリとタクは頷いた。  「愛していたから、思い通りにいかないのが腹立たしかったんだね」  コクリ。又頷く。   そんな無言のタクを見つめた。  「私はタクの恋人になっても……妻になっても、タクの物にはならないんだよ。  人なんだよ。人間。意志を持った人間。  だから考えだって違う時は当然あるし、思い通りになる訳がない。殴られたら当然痛いし、悲しい。  私はタクの所有物ではないんだよ」  そう言ったら涙が溢れた。   そう。   私は人間。   誰の所有物でもない。   夫の所有物でもないし、親の所有物でもない。   痛みも悲しみも辛さも苦しさも感じる人間。   そうだ。   そして   ミクだって私の所有物ではなく、ちゃんと痛みも悲しみも辛さも苦しさも感じる、人格がある――――人間。   私と同じく、苦しみを抱えた人間。
/1109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25567人が本棚に入れています
本棚に追加