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その後、タクは何も語る事無く、暗い顔をして目を合わせないまま席を立ち、背を向けた。
「……じゃあな」
こっちを見ずに言ったタクの言葉。私は何も返さない。
今日がタクと会える最後の日で、もう二度と会えないのに。
「ごめん」
そう、微かに聞こえた。
聞き逃してしまいそうな小さな声。
タクは歩きだす。こちらを振り向きもせず。
私はただ、その背中を見るだけ。
「……さよなら」
私も、小さく呟いた。多分タクの耳には届かないだろう。現に、タクは振り向きも立ち止まりもしない。
私に苦しみを与え続けた、憎い男、タク。
その姿が、見えなくなった。
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